鎌田敏夫「29歳のクリスマス」

1994年のクリスマス目掛けて放送されたドラマの小説版です。あとがきでご本人も自慢してますが、普通は他の作家に任せる小説化の作業を脚本家自身で行ったとか。そのせいでかなりドラマに忠実な内容になってます。放映当時アタシは22歳でしたが、毎週非常に楽しみに観ていた記憶があります。その証拠…というのも変な話ですが主題歌になったマライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」のCDを中古で買ってきて繰り返し繰り返し聴いてましたし、数年後夕方の枠で再放送になった時には全話録画しました。


29歳も過ぎ、もうすぐ30歳のクリスマスを迎える訳ですけれども、実はこの物語の中の主人公二人に共感することは何一つなかったりします。ココで「あの時わからなかった彼女達の気持ちが今やっと理解出来るようになりました」とか言えれば格好がつくんでしょうが、残念ながらちっとも。じゃあ何故このドラマに惹かれ続けてるのかといえば、多分単なる”憧れ”なんだと思います。


山口智子松下由樹が仕事や恋人のことで泣いたり喚いたりしている様が非常に羨ましい。当時、自分はこんな人生は歩まないだろうなぁと思いながら観てましたが、やっぱりそんなのとは程遠い人生です。こう書いちゃうととかなり卑屈なようですが、ぶっちゃけ当時のドラマってそうだったじゃないですか。”トレンディドラマ”なんて括り付けられて、現実味のない豪華な部屋で現実味のない小奇麗な人間が有り得ないぐらい波乱万丈な人生を送ってる。そんなのをホエ〜ッと口開けて観てるのが楽しかったんですよ。ただ、この「29歳のクリスマス」に関しては住んでる場所は古い一軒家、ソコで独身女がチャンチャンコ着てワイン呑みながらグダ撒いてる、ってトコロがもの凄く新鮮だったんですよね。なんとなくドラマの中の人達と身近になったような気になれた。でも所詮ドラマはドラマですから。自分と重なるところは、少なくともアタシにはないです。だけどそんなドラマ作りというのが好きだったんですね。なにか他と違うことやろうってかんじが。CMに繋がる直前に必ず出てくる白地に黒の文字、とか。好きです。なかなかに深い。


思わず長くなってしまいました。本の話にもどります。単なる小説として読んだらやっぱり本職の人ではないですから結構アラが目立ちますけども、映像では知りえなかった登場人物の気持ちなんかが今になってわかったりとかして、ちょっと得した気分になれます。あのドラマが好きだった人には、楽しく読めること請け合い。